タトゥー除去レーザー


レーザー治療は、最も多用される治療法です。 

大切なことは、如何に皮膚のダメージを最小化しつつ色素を破壊するかに尽きます。

色素沈着、色素脱失、肥厚性瘢痕、ケロイド形成などを如何に回避しつつタトゥーを除去するか、望ましくない皮膚トラブルが発生した場合、如何に対処しつつタトゥー除去を続けるかが問題となります。

レーザー治療で大切なことは「最小回数」「最短期間」で「美しく自然」に除去することです。

他施設の治療方法に言及するのは本意ではありませんが、やはり昨今レーザーの種類、機能を喧伝する風潮が過剰なようです。

誇るべきものは「レーザーの性能機能」ではなく「治療結果」です。

タトゥー除去は、皮膚治療の総合力が必要です。

治療の実効性、治療結果が全てです。


 

 

 

※以下の記載は若干古い内容を含みます(2017年10月追記)


当院のレーザーによるタトゥー治療方針

 

当院のレーザーによるタトゥー治療の大きな方向性は以下の4点です。

 

(1)社会生活が行える程度の除去(イレズミだったとはわからない程度がゴール)
(2)出来るだけ短い治療期間
(3)出来るだけ短い少ない照射回数
(4)出来る限り安価に・・・治療費定額制(暫定的措置)

その代償として以下の2点が犠牲になります。
(1)1回1回の最大限照射(照射面積、照射エネルギー) → 大きな心身の負担
(2)厳密な照射後スキンケア・生活制限

上記を原則としてそれぞれのケースに合わせて治療方針を決めます。

 


  

レーザーによるタトゥー治療の技術的・理論的背景

レーザーによるタトゥー除去で上述の方向性を実現するためには

 

(1)墨が入っている皮膚深度にまで必要十分なエネルギーを到達させる(Enough energy at Ink region)
(2)色素沈着、色素脱失、テクスチャーの変化といった皮膚表面のダメージを最小化する(Minimize skin damage)
(3)タトゥー絵柄をぼかして周囲皮膚になじませる(Blurred outlines)

という(1)(2)(3)のいずれもが必要です。

(1)については、照射エネルギーは複数照射で(multi-pulse)エネルギーを蓄積することは出来ない、という重要な原則があります。
つまり一撃で(single-pulse)必要十分なエネルギーを加えないとエネルギーが届かないという事です。言い換えれば「1回の治療時には重ね照射が出来ない」ということです。なぜなら複数照射でエネルギーを与えようとしても初回照射直後に皮膚内で照射によ-る気体の層(gas & steam)が形成されてしまい(white light flash)、2回目以降の照射が色素に到達できなくなるからです(optical shielding phenomenon)。ですから単位面積当たりの照射エネルギー(J/cm2)を一定値以上でsingle-pulse照射できない限りタトゥーは何年照射し続けても消去できません。

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(2)についてはいくつかの原則があります。
皮膚表面の照射エネルギー(J/cm2)が小さければ小さいほど皮膚ダメージは小さくなります。また同じトップハットのビームプロファイルであっても照射口-径が大きければ大きいほどビームプロファイルが安定し、ガウシアン化や照射部分周囲へのエネルギーの影響が減少します。インク深度でのフルエンスを同一に設定した場合、照射口径が小さければ小さいほど皮膚表面のフルエンスは増大し、その結果皮膚ダメージが増大します。つまり照射口径を大きくすればするほど皮膚に優しく、小さくなればなるほど皮膚表面が損傷するため、可能な限り大きな照射径で照射した方が(2)に対しては有利に働きます。

 

(3)について。
いくら色素が除去できてもそこの皮膚性状が周囲組織と異なっているとその輪郭が残ってしまい不自然な印象が残ることがあります。その場合、主に「色」をターゲットにしたQスイッチヤグレーザーのみでは不十分です。相当激しい照射方法にはなりますが、高出力の炭酸ガスフラクショナルレーザーでスタックを重ねて、広い面積を細かな多くのドット上のビーム光のスポットでスポット状に表皮・真皮を打ち抜いて貫通蒸散させてしまうことでタトゥーとその周囲組織をぼかすようにすることが可能です。

ここで(1)(2)を両立させるにあたって立ちはだかる大きな壁があります。それはQスイッチヤグレーザー自体のマシン容量です。レーザーを1ショット照射する際にどれだけのエネルギー(J)を出せるか(J/Pulse)がタトゥーレーザーとしての生命線といっても過言ではありません。弱い出力しか出せないマシンは有効照射エネルギー(J/cm2)を確保するためには照射径を小さくせざるを得ず、皮膚ダメージが増大します。細いビーム光で照射すれば何とかインク深度まで到達は出来るのだが、到達するまでに組織を破壊しながらレーザー光が進んでいくというイメージです。その結果、色素は抜けても色素沈着・色素脱失・肥厚性瘢痕・ケロイド化を誘発することになります。高出力で照射できるマシンは大口径で有効照射エネルギー(J/cm2)を確保することが出来るため皮膚ダメージが段違いに少なくなります。太いレーザー光が皮膚表面を素通りしてインク深度まで到達し、そこでインク領域を蒸散させるイメージです。その結果、相対的に皮膚ダメージは減少します。

つまり、(1)(2)を両立させるためには、必要十分なエネルギー(Enough energy at Ink region)を精度の高いトップハット型ビーム(TopHat beam)によって大口径(large spotsize)で単一照射(single-pulse)にて照射することが皮膚表面のダメージを最小限にして深部に十分なエネルギーを到達させる唯一の方法です。引き続き、どうしても残存してしまう一部の領域は小口径照射にて皮膚ダメージを覚悟で照射していくことになります。

色素の除去がある程度進んだ段階で(3)を加えていきます。治療範囲全体を照射するのではなくポイント所を中心に(意味の強い絵柄の箇所やコントラストの強そうな箇所; 龍の顔、細かな絵柄、文字など)に照射し、ぼかしを加えていきます。

補足ですが、Qスイッチヤグレーザー以外のQスイッチレーザー(例えばQルビー)でも小範囲単色ならば時間をかければ(レーザーの性質上最大1Hzのスピードで小口径照射しかできない)照射は可能ですが、照射範囲が広い場合は実際問題としてかなり厳しく、カラータトゥーの場合は不可能です。サロンのマシンは絶対的マシン容量が不足しているため多少色を薄くする程度以上のことはできませんのでサロンゆかりの方にはたいへん申し訳ないのですが時間の無駄です。そもそもレーザータトゥー除去は医療行為です。

 

 

タトゥーがカラー(マルチカラー)の場合

タトゥーが黒単色の場合は1064nm波長による照射のみですが、カラーの場合は治療方法が複雑になります。
虹色の順番「赤→橙→黄→緑→青→藍→紫」の色のスポットを平面にリング状にならべると12色相環が描けます。色相環の対側に位置する2色は補色といいます。補色は互いにレーザー光の吸収度が最も高いので、基本的にはタトゥーカラーに対する補色のレーザー光を照射することになります(深達度の問題は考慮外です)。
緑色の補色は赤色、青色の補色は黄色ですから

 

1) 緑色タトゥーに対しては 650 nm (赤色のレーザー)
2) 青色タトゥーに対しては 585 nm (黄色のレーザー)
3) 赤色タトゥーに対しては 532 nm (緑色のレーザー)
4) 黒色タトゥーに対しては 1064 nm(赤外光のレーザー)

の照射を行ないます。
目的のレーザー光を得るために1064nmの波長をKTP結晶に通すことで532nmに変換し、それをさらにビームコンバーターによって585nmあるいは650nmに変換します。
波長変換を繰り返すため出力はかなり減衰し、黒色に対する1064nm波長の光を1ショットで1000mJの強さで照射したとすると一般論ですが

1) 650 nm は250mJ (1064nm波長の約25%)
2) 585 nm は300mJ (1064nm波長の約30%)
3) 532 nm は500mJ (1064nm波長の約50%)

にまで減衰します。
従って大元になる1064nm波長自体を高出力でシングルパルス照射できるレーザーマシンの容量が大前提になります。

 

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本邦でのレーザーによるタトゥー治療の現状

当院を受診される患者さんのお話では
「レーザーでタトゥーは消せない(ので切除、植皮あるいは削皮した方が良い)」
「レーザーで消せないことはないが、10回以上はかかる(ので切除、植皮あるいは削皮した方が良い)」
「カラータトゥーはレーザーでは消せない(ので切除、植皮あるいは削皮した方が良い)」
という方針を一般論として他施設の医師から示される事が多いようです。

 

まず第1に、ある医療施設の治療方針は、そこの施設の設備などの治療環境の枠内での限定された治療方針です。同じ医師でも施設Aにいるときの治療方針と施設Bにいるときの治療方針は異なるものです。
従って一般論としての上述の治療方針を示すことはできません。あくまでも「当該クリニックではレーザーでタトゥーは消せない」「当該クリニックでは10回以上はかかる」「当該クリニックではカラータトゥーはレーザーで消せない」という意味だと御理解下さい。

第2に、言葉の定義の問題ですが、以下のAもBも同じ「タトゥーを消す」という意味で使われます。
A「タトゥーレーザー治療で全く痕跡なくタトゥーを消し去る」
B「タトゥーレーザー治療で、わずかに皮膚の質感の違いは感じられるが元のタトゥーの輪郭・形状などは不明で、公衆浴場・プールなども問題なく入場でき社会生活が営める。元々タトゥーがあったことも専門家がしっかり診ないと判別できない」

Aはいかなる治療をもってしても不可能ですが、Bは条件付きで可能です。ですから「タトゥーを消す」いう言葉がAなのかBなのか、あるいはそれ以外なのかを明確に意識する必要があります。
ほとんどの場合、全く痕跡なくタトゥーを消し去ることが目的(A)なのではなくタトゥーがあったことが他人にわからず社会生活を営めることが目的(B)です。

Bを可能とする条件はかなり厳しいものがありますが例えば以下のようなことです(当院の場合)。

1)クリニックの天井裏に巨大で高重量(ヒトの重さほどあります)のアップトランスという変圧器を取り付け、1064nm波長自体を高出力でシングルパルス照射できるレーザーマシン(最高1600mJ)が稼働できるようにして、そのマシンを原則として全開で照射する
2)照射後長期に厳密なスキンケア、生活指導を行う
3)炭酸ガスフラクショナルレーザー照射や他の処置なども加えて総合的な治療を行う
4)高出力レーザー(1500mJ以上)を複数台備え使い分け、故障にも備える

本邦では現在一般に400mJ〜1000mJのレーザーマシンがタトゥー除去に使用されていると思いますが(結構400mJ以下のマシンを使用していらっしゃる先生も多い)、残念ながら1000mJ以下のマシンでは「タトゥーを薄くする」ことは出来ても「タトゥーを消す」ことは困難だと思います。

*なぜ一般に高出力レーザーが導入されていないのか
1000mJ以下のマシンであっても若返り治療その他の目的のためであれば十分目的を果たせますのでタトゥー治療を考えないのであれば強いて高出力レーザーを設置する理由はありません。1600mJマシンのようなモンスターマシンになってくるとわずかなアライメントのズレなどでたちどころに防護レンズを打ち抜いたり光学系にトラブルを生じてランニングコストも莫大ですし修理のために治療もストップします。レーザーメーカー(代理店)の迅速で密接なメンテナンスが不可欠ですが対応はかなり?です。レーザー自体が非常に高価、維持費が非常に高額、レーザーがデリケートですぐ壊れる、クリニック天井裏に特殊な工事が必要、メーカー日本代理店の対応が極めていい加減、高出力でなくともタトゥー以外の治療は大丈夫、となると高出力レーザーの導入は普通の美容クリニックでは考えません。そのため一般的には高出力レーザーは導入されていないのが現状です。

 

 

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レーザータトゥー除去2016 ピコレーザーとQスイッチレーザー 

2016年4月現在、数種類のピコレーザーがタトゥー除去治療に用いられるようになってきています。(4年ぐらい)。

ピコレーザーとはパルス幅(レーザーが照射されている時間)が数百ピコ秒のレーザーです。 

これはQスイッチレーザーのパルス幅に比べ 数分の1(5分の1とか8分の1とか)の照射時間です。


 その結果レーザーの特性として 1パルスで照射できるトータルの熱量が同一であるならば(重要) 対象物を破壊する力 が増し、対象物を選択する力 は下がる。 という特性を持ちます。

 Qスイッチレーザーと比較すると、ピークパワーは数倍、パルスパワーは数分の1、という感じです。 ピークパワー(最大瞬間風速的パワー)は増し、パルスパワー(1照射で出せるトータルの熱量)は下がっている。 

実際問題としては 1パルスで照射できるトータルの熱量 はQスイッチレーザーの方がピコレーザーの数倍はありますので タトゥー除去に対しての治療効率はピコレーザーがQスイッチレーザーに勝っている、とは単純には言い切れない訳です。

 

どのような種類のピコレーザーとどのような種類のQスイッチレーザーを比較するのか?の問題でもあります。 加速の優れたバイクか巡航能力に優れたスポーツカーか、の比較に似ているかもしれません。 ゼロヨンのバトルでは?アウトバーンを長距離巡航するバトルでは?バイク、スポーツカーの機種は?


 レーザー理論としてのマニア的面白さはさて置き、 タトゥー除去としてのプラクティカルな話においては、理論よりも治療結果の実効性が重要、理屈より結果、が求められます。


施術の流れ

○照射部位の剃毛をします。
タトゥー除去レーザーは黒い色に反応しますので、処置前に照射部位の剃毛を行います。

 

麻酔を行います。
施術部位の大きさや患者様の希望により、麻酔クリームもしくは注射による局所麻酔を選択します。

 

 

○レーザーを照射します。
適切な波長・出力のレーザーを照射していきます。
施術前の麻酔に加え、クーリングを行いながらレーザー照射していきますので、施術中の痛みが軽減されます。

 

○創部の処置を行います。
レーザーを照射した直後は皮膚は白色になり(ホワイトニング現象)、その後照射スポット中央から点状出血をみることもあります。翌日にはカサブタがつき、1〜2週間程度でカサブタが取れて上皮化します。上皮化までの間、創部を保護するためガーゼなどによりしっかりと覆っていただきます。色調の減少は早くて3週間目、通常4〜6週間後に起こります。皮膚内で色素が貪食されるのに数か月を要する事もあります。 




治療間隔と回数

 

タトゥーの色や深さ・大きさなどにより治療回数に個人差があります。

単色のものでも、目安として3〜5回以上はかかると考えてください。カラーの入っているものですと、場合によって10回以上かかる場合もあります。

レーザーとレーザーの間隔は最低3ヶ月は空けていただきます。

 

 

注意事項

施術前後の日焼けは避けてください。

 

治療後の皮膚は赤みがしばらく残ります。一時的に色素沈着を生じる場合がありますが、UVケアをしっかり行い刺激を与えなければ徐々に薄くなっていきます。

効果には個人差があります。

疾患により、再発や数回照射しなければならないことがあります。

部位により脱毛する場合があります。



 

治療を受けられない方

  • 妊娠をされている方
  • 日焼けをされている方
  • てんかん発作の既往のある方
  • 光過敏症のある方
  • 施術部位に傷、ヘルペスのある方

 



 

併用療法

炎症後の色素沈着を予防するためにも、レーザー前より内服治療や点滴治療を開始することをお勧めしています。
タトゥーの色や大きさなどにより、切除縫合法をお勧めする場合もあります。 

 

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※治療を検討されている方が御自身の治療経過を帰納的に類推して頂きやすいように出来るだけ多くの症例を提示しています。
※すべての症例は Harmony XL Q-Switched Nd:YAGハンドピース、WON COSJET TR、TRI-BEAM、Fotona QX MAX、CO2フラクショナルレーザー 各マシンの単独あるいは複合照射を基本として治療を行っています。
※多くの症例は治療途中です。年単位で症例を追っています。御来院を待っている症例もあります。
※照射方法以外にも患者様の御事情(来院タイミング、スキンケアが出来ていたか)、クリニックの事情(レーザーの故障など)などの総合的な要因の結果としての治療経過ですので状況が異なれば異なった治療経過を辿る可能性があります。
※治療方法は年々修正進化し続けていますので、数年前からスタートした症例の経過と現在からスタートした場合では後者の方が経過が改善されています。

 

(K.M/e.y)

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